かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

ここではない、どこかへ

トシと付き合い始めるまで、
私はいわゆる「女の喜び」を知らなかった。


ちなみに男性経験は片手では少し足りない程度なので、
多くも少なくもない方だろう。



それまでも気持ち良さは感じていたし、
行為自体は、嫌いではなかった。


好きな相手と肌を触れ合わせたり、
女として求められることで得られる精神的快感は
他では得難いものだから。


が、いわゆる「絶頂感」というものは体感したことがなく、
都市伝説(!?)みたいなものかもしれない、
と思っていた。



夫と私は、下の子が生まれてから夫婦生活が激減し、
ここ5年くらいは全くレス状態。


夫との仲は悪い訳ではないが、
もう完全に家族になってしまっているので
お互い欲求の対象にはならないのだと思う。


このまま一生男性と身体を重ねることはないのかもしれないなぁ、
と漠然と思っていたが、
それでも全く平気だった。



それがトシと付き合い始めて、180度変わってしまう。


初めて身体を重ねたときから、
月並みな言い方だが、身体中に電気が走るような
軽いショックを感じるほどの快感に襲われた。


K:「こんなの…、こんなの、知らない…。コワい…!」


行為の間、うわごとのように
こう口にしていたことを覚えている。



そんな私の身体を、トシはいつも
まるで壊れ物を扱うかのように
優しく丁寧に解いていく。


触れるか触れないかの絶妙な指使いで
頭の先から足の先まで。


同じ箇所に、甘いキスが降り注ぐ。


もうそれだけで、私の胎内から
熱い液体が溢れそうになる。



正確に測ったことはないが、
トシは前戯に恐らく1時間以上かけていると思う。


その指で唇で全身を蕩かされ、
何度も何度も高みに押し上げられて…。


絶頂と絶頂の境目すらわからなくなる頃には
シーツは私の汗と胎内から迸った液体で
びしょ濡れになっている。



そしてようやくトシ自身が
私の内に入って来てくれるその瞬間。


いつでも一番最初にトシに触れられたときの
身体中に電気が走るような感覚が蘇る。


それは痛みすら伴うくらいの、強烈な快感。


トシの逞しい楔に身体を刺貫かれた私は、
ただ身悶えるしか術はない。



これまた正確にはわからないが、
多分繋がっている時間も1時間は越えているだろう。


上になり、下になり、横になり、
まるで二体の蛇のように、絡まり合って。


喘ぎ過ぎて声が枯れてしまった私に
何度も口移しでお水を飲ませてくれるトシ。


その間も、私の胎内がトシを離すまいと
締め付けているのが自分でもわかる。



毎回毎回深まる快感に、恐怖すら覚えて
トシの身体にしがみつく。


K:「おかしくなっちゃう…!」


T:「いいよ、オレの手で、
もっとおかしくなって…。」


そう言ってトシが一層深く私の内部を突き上げたとき、
真空の世界に放り投げられたかのような衝撃と共に、
私は意識を手放してしまった。



ふと気が付くと、そっと私の頭を撫ぜながら
こちらを見ているトシと目が合った。


K:「な、に…。今の…?」


T:「かすみ、気を失ってたみたいだよ。


息はしてるから、大丈夫と思ったけど。」


K:「ウソ…!ど、どれくらい?」


T:「5分くらいかな。」



まさか気を失ってしまうなんて…!


ビックリしたのと恥ずしさに、
まだ快感の余韻で重たい腕を持ち上げて顔を覆う。


K:「私ばっかりこんなになって…。


恥ずかしい…。」


T:「なんで?オレはすごく感激したよ。


かすみがこんなに感じてくれるなんて。


男冥利に尽きるとは、このことだよ。」


そう言って強く私を抱きしめてくれるトシ。



T:「で、もう身体は大丈夫?」


K:「え...?」


T:「まだまだ、終わりじゃないよ。」


K:「待って、待って!


あ…!」


それからさらに二度三度、
いやもう回数もわからないくらい高みに押し上げられ。


ようやくトシが果てた後は
腕一本動かせないくらい全身が重く、
そのまま深い眠りに引きずり込まれてしまった。



T:「かすみはホント、感じやすい身体してるなぁ。


ほら、こんなことするだけで…。」


そう言って私の全身をつつくトシ。


元々私はかなりのくすぐったがりだが、
行為の後はさらに皮膚感覚が鋭敏になっていて、
ほんの少し指先で撫でられるだけでもうダメ。


K:「や…!ダメ!
くすぐったいよ〜(笑)!」


そう言ってベッドの上で逃げ回る私の身体を押さえつけ、
さらに触れている間に、
トシの目が征服欲を帯びてくる。



そして再び私を貫くときのトシの顔は、
完全にオスそのものだ。


そして私は、
力強いオスに愛情を持って征服される一匹のメス。


本能を満たされるこの瞬間、
これ以上の快感はこの世に存在しないと確信した。