かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

伝説の祭り男

今日から3日間、トシは再び他県に出張だ。


トシの仕事は公共施設からの受注が多いので、
納期も厳しいし失敗は許されない。


誰もがムリと思うような案件を
いつもギリギリのところで
クリアしている様子を聞くと、さすがだと思う。



今度の仕事もお役所が絡んでいるため、
いつにも増して条件が厳しく、
昼夜問わずの作業になるらしい。


その準備のため、
昨日はあちこちに飛び回っているようだったが、
移動の合間に5回も電話をしてくれた。



いつも明るいトシだけれど、
昨日は特にテンション高め。


T:「オレにとっては、
今度の仕事は祭りみたいなものなんだ。


ムリな条件を出されれば出されるほど、
絶対やってやる!と燃えるんだよね。


誰もができないと思うことをやり遂げて
伝説を作りたいんだ。」


K:「そんな風にムリを楽めるなんて、
さすが、トシだね!


話を聞いてると、
私までワクワクしちゃう♪」


トシのハイテンションが乗り移った気がしてそう言うと、


T:「かすみは本当に、いい女だなぁ。


オレ、かすみのそういうところが大好きだよ。」


とトシ。



私にしたら、特別なことを言ったつもりはない。


トシが楽しそうだから、私も嬉しい、
それだけのこと。


そう言うと、


T:「オレが大変な仕事を目の前にして
よし!やってやる!と燃えているときに、


今まで付き合ってきた女は
「ムリしないで」とか
「そんなに頑張らなくても...」
と水を差してきた。


最悪なパターンだと
「そんなに仕事が大事なの?!」
と拗ねたり泣かれたり。


だから、女には仕事の話はしない、
と決めてた。


だけど、かすみはオレが楽しんでいることを
一緒に楽しんでくれる。


それが本当に嬉しいんだ。」



K:「だって、ムリしないでって言ったって
ムリしなくちゃいけないシチュエーションなんでしょ?


トシが大変な状況を苦しんでたら私も苦しいけど、
楽しんでできるんなら単純に良かったな、
って思うよ。」


T:「そんな風に考えられる女は、他にいないよ。


だから、かすみと話すと元気がもらえる。


特に用事もないのに、一日に何回も電話するなんて、
以前のオレじゃ考えられないもんな。」



大好きなトシが楽しそうにしていれば、
私も楽しくなる。


大きな仕事を目前に
トシのテンションが高くなっているときは
私もワクワクする。


私が笑うことでトシを元気づけられるのなら、
いつだって笑っていようと思う。



T:「かすみはオレの元気の素だよ。


かすみに「すごいね!」と言ってもらえるよう
頑張ってくるから。」


K:「うん、また新たな伝説を作って来て♪」



きっと今日から3日間は、
私からのLINEが既読になればマシ、
という状態が続くだろう。


でも、それだけ全神経を向けなくては
こなせない仕事だということ。


愛する男性が仕事に全力投球している時に
足を引張るような存在にはなりたくない。


トシの仕事が無事終わり、
満面の笑顔で私の元に帰って来てくれるのを
楽しみに待とう。