かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

本を読む女

私は本が大好きだ。


三度の飯よりも、と言うと大げさかもしれないが、


この先一生新しい食べ物が食べられない人生と、
この先一生新しい本が読めない人生


どちらか選べと言われたら、
迷わず前者を選ぶ。



両親も祖父も本を読む人たちだったので、
実家はいたるところに本が置いてあった。


本棚にはもちろん、
ソファやベッドのサイドテーブル、
テレビの横のラック、
ダイニングテーブルの片隅、
車のドアポケット、などなど。


手を伸ばせばそこに本があるのが当たり前だったし、
おもちゃやゲームはダメでも、
本だけは望めばいくらでも買ってもらえた。


そんな環境に育ったせいか、
記憶にないくらい小さな頃から、
本は私の一番の友達だったのだ。



覚えている限りで一番最初に夢中になったのは、
世界少年少女文学全集。


小公女、小公子、ガリバー旅行記、
十五章年漂流記、家なき子、フランダースの犬、
アルプスの少女ハイジ、赤毛のアン、三国志


これらの本たちは、
私に行ったこともない見たこともない物語の世界に
どっぷりと浸り、思う存分想像する喜びを教えてくれた。



小学校に上がると、推理小説に目覚める。


怪人二十面相、怪盗ルパン、シャーロック・ホームズ


彼らがこの頃の私のヒーローたち(笑)


その内、怖いもの見たさで金田一耕助シリーズに手を出し、
そのあまりの恐ろしさに夜眠れず泣いたことも、
今となってはいい思い出だ。



中学高校時代は、主に海外の有名な作家の推理小説に夢中になった。


エドガー・アラン・ポー、エラリー・クィーン、アガサ・クリスティ、
スティーブン・キング、レイモンド・チャンドラー


これらの作家の現存する作品は全て読んだが、
アガサ・クリスティの『カーテン〜ポアロ最後の事件〜』だけは
大好きなポアロとお別れをするのが悲しくて、
未だに読めないでいる。



大学時代以降は、とにかく興味を惹かれた本ならなんでも
手当たり次第読み漁っている。


推理小説が好きなのは変わらないが、
恋愛小説も時代小説も大河小説も読むし、
事実は小説より奇なり、
と思わせてくれるノンフィクションも大好きだ。


暇な時間があればとりあえず本を開くので、
本の内容やボリュームにもよるが、
平均すると週1〜3冊、
年間100冊くらいの本を読んでいる計算になる。



そして私が心を惹かれる男性は、
必ずと言っていいほど「本を読む人」だ。


好みのジャンルは違っても、
「本を読む人」とはどこか通じるものがある気がする。


当然、トシも本を読む。


忙しい人なので、私ほど量を読み散らかすことはしないが、
それだけ厳選された本をしっかりと読んでいるようだ。


たまにトシから今読んでいる本の話を聞くと、
同じ本を読みたくて、
すぐにAmazonの注文ボタンを
クリックしている自分がいる。



ある日のデートでのこと。


ベッドで熱いひとときを過ごした後、
抱き合ったまま二人ともウトウトしていた。


先に目が覚めた私は、そっとトシの腕の中から抜け出し、
バッグの中から文庫本を取り出して
再びトシの横に潜り込む。


ベッドサイドの灯りをほんの少しだけ明るくして
文字を追い始めると、たちまち心は物語の世界へ。


背中に愛する人の温もりを感じながら、
大好きな本の世界に浸る幸せ。


まさに至高の読書環境だ。



夢中になってページをめくっていてふと気が付くと、
トシが優しいまなざしで私を見つめていた。


K:「あ!起きてたの?」


T:「ベッドでウトウトしてて目が覚めたとき、
スマホ触っている女はたくさんいたけど、
本を読んでいる女はかすみが初めてだな。」


K:「ゴメン…!」


T:「謝らなくていいよ。


やっぱりかすみは特別な女だと思ったし、
そんなところが好きなんだから。」



もし
この先一生新しい本を読めない人生と、
この先一生トシと会えない人生


どちらか選べと言われたら、迷わず前者を選ぶからね!
(多分…(笑))