甘え下手な甘えん坊
私は人に甘えるのが、とても苦手だ。
元々の性格もあるだろうし、
二人姉弟の長女、という兄弟構成も
影響していると思う。
末っ子長男でヘタレな弟に対して
両親が常に手を焼いていたため、
「私はお姉ちゃんだから、しっかりしなくちゃ!」
と思って育ったからだ。
また、中学高校と女子校に通ったことも
甘え下手に拍車をかける一因だったと思う。
中高一貫の女子校と言うと、
一般的にはおしとやかなお嬢様の集団、
というイメージがあるかもしれない。
しかし実際は、10代の多感な時期を
異性の目を気にせず暮らす、というのは
逆に「何でも自分でできる」、
独立心旺盛な女子を育てることとなるのだ。
例えば女子校では、
体育祭の看板作りなど、体力を使う作業も
当然自分たちでこなさなければならない。
のこぎりでベニヤ板を切り、
金槌で釘を打ち、
ペンキで色を塗り、
ロープをかけて数人掛かりで大看板を立ちあげる。
「え〜!釘なんて、打てな〜い!」
と甘えた声を上げてみても、
「じゃあ、オレがやってあげるよ」
なんて言ってくれる(かもしれない)男子が
そもそもいないのだ。
それどころか、
「あ、そ。
じゃあ、あっちで門の飾りでも作ってて。」
と、ティッシュで造花を作るような
地味な作業に振り分けられるのが関の山だ。
さらに私の通った女子校は、
地域トップの男子校を凌駕する偏差値を誇る
(可愛げのない)学校だったので、
余計に自立心旺盛な女子が多かったように思う。
なにしろ、同級生の2割弱は女医、
1割ほどは女社長。
大企業で同期の誰よりも早く
管理職になった子もいるし、
国内外を股にかけて活躍する子もいる。
「ダイヤは男に買ってもらうのを待つより、
気に入ったものを自分で買えるようになるべし」
が私たちの合い言葉だ。
生来の長女気質に加え、
こんな環境で中高の6年間を過ごしたのだから
甘え下手に拍車がかかったのも仕方のないこと。
このまま一生、
誰にも甘えることなんてないんだろう、
と半ば諦めていたときに、トシと巡り会った。
そして、今まで甘え下手だと思っていたのは、
単に私を甘えさせてくれるほどの度量のある男性と
出会っていなかっただけ、ということがわかったのだ。
今でもトシに対してだって
できることを「できない〜、やって〜」
とは言わないし、言えない。
でも、ホテルの部屋で二人きりになるやいなや、
トシの膝の上に乗って首に齧りつき、
「会いたかった…」とつぶやくことはできる。
(これでも私にしたら、ものすごい甘えっぷり。)
ベッドで果てた後に、
トシが口移しで飲ませてくれるお水が美味しくて
「もっと、ちょうだい」と言ったときは、
50年弱の人生の中で、一番甘えた瞬間だったと思う。
K:「もしね、女の子を可愛らしく育てたかったら、
女子校に行かせるべきじゃないと思う。
私みたいに、甘え下手になっちゃうから。」
T:「そんな甘え下手なかすみが
オレに対してだけは甘えん坊になる、
っていうのが堪らないんだよ。
誰にも懐かない野生のライオンを飼いならした!
みたいな達成感がある。」
K:「それって、私が猛獣ってこと?!」
T:「そうかも(笑)
オレの甘えん坊の可愛いライオンちゃん♪」
そう言ったトシの首筋を、
ライオンのふりして甘噛みしながら
やっぱり女子校育ちも悪くないかも、
と思ったのだった。
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