かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

万が一の時には…

台風の接近に伴い、

私の暮らしている地域でもついさっき、

大雨警報が発令された。


まだそれほどではないけれど、

庭の木々も時折吹く強風に

不穏に揺れている。



トシの仕事は建築現場なので、

こうした台風の日は何かあったときのために

ずっと現場事務所に詰めていなくてはならないらしい。


晴れていても天候が悪くても、

本当に大変な仕事だと思う。



台風時に限らず、

建築現場で働くということは、

トシ自身も何かしら危険な目に遭う可能性が低くはない、

ということ。


高い場所に登ることだってあるし、

山積みの重い建材のすぐ脇を通ることだってある。


「万が一」の可能性は、あちこちに転がっている。



でも、こういう関係の場合、

もし相手に何かが起きたとしても、

知る術はない。


ある日突然、毎日来るはずのLINEが途絶えたら…。


電話をしても、全く繋がらなかったら…。


きっと何が起きているのかワケがわからず、

悶え苦しむことになるのは

火を見るより明か。



付き合って2、3ヶ月した頃、

その不安をトシに打ち明けた。


K:「もしトシに何かあっても、

私にはわからないんだよね…。」


T:「大丈夫。

オレに何かあったら、

田中君(仮名)からかすみに連絡が入るから。」


K:「田中くん…??」


T:「ウチの専務。

オレに万が一のことがあったら、

携帯の短縮番号1に入っている人のところに

必ず連絡して、と頼んである。」



私の方から

「何かあったらわかるようにして」

とお願いした訳じゃない。


トシが自発的に、

万が一の時に私が心配することのないよう

考えてくれていた。


そのことに心から感動した。



K:「でも、できれば一生、

田中君からの電話はほしくない。」


T:「当たり前だろ(笑)!」


そう言ってぎゅっと抱きしめてくれたトシ。


この人になら、

一生信じてついて行ける。


そう再確認した。