万が一の時には…
台風の接近に伴い、
私の暮らしている地域でもついさっき、
大雨警報が発令された。
まだそれほどではないけれど、
庭の木々も時折吹く強風に
不穏に揺れている。
トシの仕事は建築現場なので、
こうした台風の日は何かあったときのために
ずっと現場事務所に詰めていなくてはならないらしい。
晴れていても天候が悪くても、
本当に大変な仕事だと思う。
台風時に限らず、
建築現場で働くということは、
トシ自身も何かしら危険な目に遭う可能性が低くはない、
ということ。
高い場所に登ることだってあるし、
山積みの重い建材のすぐ脇を通ることだってある。
「万が一」の可能性は、あちこちに転がっている。
でも、こういう関係の場合、
もし相手に何かが起きたとしても、
知る術はない。
ある日突然、毎日来るはずのLINEが途絶えたら…。
電話をしても、全く繋がらなかったら…。
きっと何が起きているのかワケがわからず、
悶え苦しむことになるのは
火を見るより明か。
付き合って2、3ヶ月した頃、
その不安をトシに打ち明けた。
K:「もしトシに何かあっても、
私にはわからないんだよね…。」
T:「大丈夫。
オレに何かあったら、
田中君(仮名)からかすみに連絡が入るから。」
K:「田中くん…??」
T:「ウチの専務。
オレに万が一のことがあったら、
携帯の短縮番号1に入っている人のところに
必ず連絡して、と頼んである。」
私の方から
「何かあったらわかるようにして」
とお願いした訳じゃない。
トシが自発的に、
万が一の時に私が心配することのないよう
考えてくれていた。
そのことに心から感動した。
K:「でも、できれば一生、
田中君からの電話はほしくない。」
T:「当たり前だろ(笑)!」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれたトシ。
この人になら、
一生信じてついて行ける。
そう再確認した。
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