梅よりも桜よりも
二人きりになれる空間にたどり着くと、
すぐ立ったままの状態でトシにしがみつく。
K:「会いたかった…」
T:「長いこと待たせて、ごめんね」
強く抱きしめられると、
一ヶ月半の隙間が瞬時に埋まっていく。
ギュッとしてもらって落ち着いたので、
ソファに座ってビールで乾杯。
朝から大好きな人とビールを飲むだなんて、
これ以上の贅沢はない。
トシは早々にジョッキを空け、
T:「かすみはまだゆっくり飲んでて」
と言いながら、私の足下に跪く。
久しぶりで恥ずかしがる私をなだめながら
片足を持ち上げて。
T:「もう、濡れてるよ…」
下着の上から指でゆっくりと撫でながら
そうつぶやかれると、
私の中から新たな泉が湧き出してしまう。
息を吹きかけられただけで全身が震え、
溢れそうになるビールのジョッキを
テーブルに置こうとすると、
T:「ダメ。最後までちゃんと飲んで」
K:「もう、飲めない…」
T:「もったいないでしょ?」
そう言って私の手からジョッキを取り上げ、
口移しでビールを流し込んで。
同時に悪戯な指が、
下着の縁をかいくぐって直接私の中へ。
アルコールとトシの指に酔わされ、
一瞬で高みに押し上げられてしまう。
その後も何度も何度も
指で舌で言葉で責められて。
足に力が入らずフラフラになった私を
ソファに座ったトシが向かい合わせに
自分の上に。
熱い楔が、ゆっくりと、力強く、
私の中を満たしていく。
K:「ダ、ダメ…!
もう、おかしくなっちゃう…!」
何度めかもう数えられない程の頂点を迎え、
息も絶え絶えに訴える。
トシは繋がったままの状態で私を抱え上げ
ベッドへ。
トシの力強い律動に翻弄され、
悲鳴のような喘ぎ声が止まらない。
もうどこが絶頂の切れ目なのかすら
分からなくなった頃、
最後の大波を二人同時に迎えた。
春の嵐のような激情のひとときが過ぎたあとは、
お互いの身体にピッタリと寄り添って
とりとめもなく言葉を繋ぐ。
K:「もう、桜もそろそろ見頃だね〜」
T:「オレ、花見には全然興味ないからなぁ。」
K:「そうなの?」
T:「誰もが奇麗だって言うありきたりのものには
そんなに感動しないんだ。
K:「そっか〜。トシらしいね」
T:「それに梅より桜より、
かすみの感じてる顔を見る方がずっといい。」
K:「姥桜、だけどね(笑)」
照れくさくて冗談で誤摩化したけれど、
本当は嬉しくて。
ギュッとトシにしがみついて
心臓の鼓動に耳を傾ける。
二人でいればいつでもどこでも
こんなに穏やかな
春の日だまりのようなひとときが訪れるのだ。
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