指先から溢れる愛
金曜日は、トシと1ヶ月半ぶりのデートだった。
一分一秒でも長く一緒にいたいから、
待ち合わせは9時半と早め。
今日こそは私の方が早く着いていよう、
と思っていたのに、
結局時間ギリギリに…。
途中で到着時間の確認の電話がトシから入った。
K:「ごめん、結局ギリギリになっちゃいそう…。」
T:「いいよ、焦って事故したらいけないし、
遅れてもいいからゆっくりおいで。」
この会話はほぼ毎回の定番になりつつあるが、
トシの声を聞くとドキドキと同時に
気持ちが落ち着くから不思議だ。
いつもの待ち合わせ場所の駐車場に着き、
トシの車に乗り込む。
T:「おはよう、かすみ。」
K:「おはよ…。」
久しぶりだからか急に照れくさくなり、
トシの顔をまともに見られない。
T:「長く待たせて、ごめんね。」
うつむき加減の私を機嫌が悪いと勘違いしたのか、
トシが謝ってくれる。
K:「ううん、この時期はお仕事忙しいって
分かってたから。」
車が動き出して、トシが前を向いたので、
心置きなくトシの横顔を眺める。
でも信号で停まって、トシがこちらを向くと
パッと視線を逸らしてしまう。
T:「なんだよ〜(笑)」
K:「だって…。久しぶり過ぎて
ドキドキしちゃうんだもん。」
いつもは車に乗り込んですぐ、
私の方から手を繋ぐのだけれど、
今日はタイミングを逃してしまった。
信号待ちの間、
肘掛けに置かれているトシの手。
たった数センチの距離が、もどかしい。
膝に置いた手を少しずらし、
小指の先でそっとトシの小指に触れてみる。
するとトシが小指をグッと私の小指に絡め、
そのまま私の手の甲を包み込む。
いつでも暖かい大きなトシの手。
優しく強く握りしめてくれる指先から
溢れんばかりの愛情を感じた。
私たちの一日は、今、始まったばかり。
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