かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

空気のような存在

この間のデートの時のこと。


ベッドの上で熱いひとときを過ごした後、
いつものようにお互いの温もりを感じながら
ウトウトと微睡む。



いつもはトシが先に目を覚ますことが多いのだが、
今回は小1時間ほどして私の方が先に起きた。


気持ち良さそうに眠っているトシを起さないよう
そっとベッドから抜け出し、
ソファに移動して持参した本を開く。


静かな部屋の中で唯一聞こえる
トシの穏やかな寝息をBGMに
大好きな本の世界へ。



T:「あ〜、よく寝た!」


ほどなく、トシが目を覚ました。


本を閉じて、再びトシの横に潜り込む。



T:「オレさ、結構神経質なところがあって
誰かが隣にいたら絶対熟睡できないんだ。


だから、家でも寝室は一人だし、
仲間と旅行してもできるだけ1人部屋にしてもらう。


だけど、かすみとだと、なぜかよく眠れるんだよね。」


K:「よかった♪


それだけトシがリラックスできてる、ってことでしょ?」


T:「うん、かすみの前ではこれ以上ないってくらい
リラックスし切ってる。


何にも気を遣わなくていいし、
ホントに居心地いい。


かすみはオレにとって、空気のような存在だよ。」



トシの言葉を聞いて嬉しくなると同時に、
ちょっとだけ疑問もわいて来る。


K:「空気のようなって…。
存在感ないってこと?!」


T:「オレにしたら、
空気のような存在って理想だよ。


側にいても全然気にならなくて、
そこにいるのが当たり前で。


そういう存在でなくちゃ、
一生続けられるとは思わない。」


K:「そうなの?」


T:「大概の男は、
最初は刺激を求めるかもしれないけど、
安定して来たら安らぎを求めるものなんだ。


特に極限まで神経を使うような仕事をしていると
一緒にいることが気にならない、
リラックスできる相手は本当に貴重なんだよ。


例えば将来かすみとオレが
一緒に暮らすようになったら、
同じ部屋にいるんだけど、
お互い別々のことをしてて。


ふと目を上げるとそこにかすみがいる、
っていうのがオレの理想。」


K:「でも、トシがあまりに何かに没頭してたら、
私、構って欲しくて
周りをグルグル回っちゃうかも?!」


T:「そしたら『ハウス!』って
部屋の隅を指差すから(笑)」


K:「なによ〜!
それじゃ、犬じゃない!」



膨れっ面をする私を見て大笑いした後で
優しく抱きしめながらトシが耳元で囁いた。


T:「空気のような存在ってことは、
かすみなしじゃ、オレは生きていけない、
ってことなんだよ。」


それならトシも、
私にとって空気のような存在だ。


それだけでなく、水であり、食べ物であり、
太陽の光でもあり。


お互いがお互いにとって
必要不可欠な存在だとしたら
この絆は永遠なんだと思う。