かすみ草の恋

アラフィフの今、出逢ってしまった運命の人。
お互い家庭がありながらも、最後の恋人として大切に愛を育んでいます。

私を愛した二人の男

この間、ある人に
「かすみさんって、すごく姿勢がいいですね!」
と褒められた。


姿勢の善し悪しは
背中に左右されるのだと思う。


つまり、背中が真っすぐだと姿勢が良く見え、
猫背だと姿勢が悪く見える。


私にとっては、
背中が真っすぐな状態が自然なので、
姿勢がよく見られるのだろう。



これは幼い頃に同居していた祖父のおかげだ。


明治生まれで元軍人だった祖父は、
箸の上げ下ろしから言葉遣い、姿勢に至るまで、
ありとあらゆることに
「きちんと」していることを求める人だった。


「今日学校で先生がこう言った。」
などと言おうものなら、
「先生がおっしゃった、でしょう。」
と、言い直しさせられ、


箸の正しい持ち方を学ぶために
小豆を一粒ずつ摘む訓練をさせられ、


道に白線が引かれていれば、
「この上を真っすぐ歩いてみなさい」
と練習させられた。



食事中猫背になろうものなら、
一尺の竹の定規のお出ましだ。


その長い定規を背中に差し込まれ、
否が応でも背中を真っすぐにするよう
躾けられたのだ。



躾に関しては厳しい祖父だったが、
その他の点では私に対しては
非常に甘くて優しい「おじいちゃん」だった。


「かすみちゃんは、本当に賢くて優しい子だ。
こんな素晴らしい子は、世界中どこを探してもおらんよ。」


というのが祖父の口癖。


祖父の贔屓目が多分に入っていたとは思うが、
その言葉が私の心を育てる養分となったことは間違いない。



そして、父も私の存在そのものを肯定し、
愛でてくれた男性の一人だ。


「かすみはみんなに愛されるために生まれてきたんだよ。
キミを愛さない人間なんて、この世にはいないから。」


とことあるごとに言い聞かせてくれた。


この二人の男性から惜しみない愛情を注がれ、
自分の存在そのものに価値がある、
と疑いもなく育った私は、非常に幸せだったのだと思う。



トシにこの話をすると、


T:「かすみを見てると、
周りの人に大切に愛されて育ったんだな、
とよくわかるよ。


だからかすみはこんなに素直で明るくて
真っすぐなんだな。」


そして
T:「おじい様とお父上に負けないくらい、
オレもかすみの存在そのものを無条件に愛しているから。」
と。



お彼岸にお墓参りには行けなかったけれど、
心の中で祖父と父に報告した。


「おじいちゃん、お父さん、
二人に負けないくらい私を愛してくれる
三人目の男性が表れたよ。


そして、私も彼のこと、
誰にも負けないくらい愛しているの。」


と。